#02 製茶工場でどういう工程でお茶ができるの?

#02 製茶工場でどういう工程でお茶ができるの?

静岡県茶が2年ぶり首位奪回!? 「荒茶」製造工程について教えて!

2021年12月24日に農林水産省から発表された農業産出額によると、ここ数年、鹿児島県に押されていた静岡県の茶が2年ぶりに首位に返り咲いたとのこと。生産量では全国トップを維持しているものの、19年に初めて鹿児島に首位の座を明け渡し、今回首位奪回を果たしたわが静岡県。とはいえ県内の茶産出額は1992年をピークに下降基調にあります。私たちは、静岡県のそしてここ東山のお茶のおいしさや魅力、安全性などをどんどんお伝えしていかなければ…と思っております。また、先日インタビューした「東山いっぷく処」の杉山敏志さん(株式会社茶文字の里東山/取締役)によると、東山の茶草場農法で育てたお茶が、他のお茶と成分にどんな違いがあるのかをただいま調査中とのこと。こちらも結果が出ましたらまたお伝えいたしますね。

さて、前述の茶の農業産出額は、栽培農家が摘み取った「生葉」と、それを加工した「荒茶(あらちゃ)」の産出額の合計で表されるものですが、この「荒茶」とは、お店で販売する製品になる前の段階まで加工されたお茶のこと。茶葉は畑で摘んだその日のうちに、蒸しから乾燥まで、約4時間かけて「荒茶」加工を行います。早朝から昼にかけて生葉を摘み、午後から夜にかけて荒茶加工し、深夜に翌日の準備というのが基本パターンになります。その工程はコンピュータ化が進んではいるものの、自然の生葉は毎日状態が変わるため、人の目でその特徴を細かく見定め、加工中の茶葉を手に取ったり香りをかいだりして、加工時間、温度、圧力などの微調整を行っているのです。今回は、この「荒茶」ができる工程をご紹介しましょう。



荒茶(あらちゃ)の製造工程

1.搬入:生葉の受け入れ

重量と品質を確認して生葉用のコンテナへ移します。



2.蒸熱(蒸し機)

生葉を蒸気で蒸して、酸化発酵を止めます。

茶葉の温度は100度近くなり、蒸す時間はお茶の種類によって異なります。

ちょっとした蒸し具合の違いも、その後のお茶のできあがりに大きく影響します。



3. 冷却(冷却機)

蒸した葉を冷まし、表面の水分をとばします。

葉の温度は34~36度ぐらいに下がり、変色も防ぎます。

この後、中揉の工程まで茶葉の温度は人肌です。



4. 粗揉(そじゅう)(粗揉機)

熱風を当てながら葉を揉み、さらに水分をとばしていきます(95度/40分)。

筒状の粗揉機の中で、手を広げたような形のフォークと波型の内壁を使い、茶葉を軽く揉みます。



5. 揉捻(じゅうねん)(揉捻機)

葉に力を加えながら揉み、葉や茎などの水分を均一にします(常温/25~50分)。

揉む工程の中で唯一、熱を加えずに行います。

渦巻模様の台の上を、お椀を伏せたような機械がまわるうちに、葉に「よれ」が生じます。



6. 中揉(ちゅうじゅう)(中揉機)

熱風を当てながら葉を揉み、乾かします(排気温度36度/35分)。

葉はさらに揉みこまれ、よれがはっきりしてきます。

この段階で、重さや水分は生葉の3分の1程にまで減ります。



7. 精揉(せいじゅう)(精揉機)

熱した板の上で、葉に力を加えながら往復運動をし、形を整えつつ乾燥します(100度/50分)。

茶葉は針のように細く締まった形で乾燥し、固くなります。

上質なお茶は、この段階で濃く、艶のある色をしています。



8. 乾燥(かんそう)(乾燥機)

保存に適した水分になるよう、熱風で十分乾かします(90度/25分)。

重さは生葉の23パーセント程度、水分5パーセント前後の茶葉となります。



9. 合組(ごうぐみ)・包装

出来上がった荒茶を大きなタンクのような合組機に入れて、均一になるように混ぜ合わせます。

出来上がった茶葉は、大海(だいかい)と呼ばれる大きな袋に入れられ、出荷を待ちます。


深蒸し茶はどの工程が違うの?

静岡県は深蒸し茶発祥の地と言われていますが、とくにここ東山で収穫される茶葉は、深蒸し茶の製造に適した葉肉の厚い、味の濃い茶葉です。そして、東山の深蒸し茶は、日本国内で最も権威のある茶の品評会「全国茶品評会」において「産地賞」をなんと10年連続、また通産20回も受賞するなど、日本国内で最高の品質の高さを誇っています。では、この深蒸し茶は、製造工程において、ふつうの煎茶とどこが違うのでしょうか。

深蒸し茶は、上記の「2. 蒸熱(蒸し機)」の工程に違いがあります。煎茶は30〜40秒ほど蒸しますが、深蒸し茶は60秒以上と蒸し時間が長いのが特徴です。この蒸す作業によって酸化酵素のはたらきを止めるだけでなく、茶葉のかたち、お茶の色、味わいが決まります。

掛川市では、現在約1,400軒の農家が茶の生産をしています。そして摘み取った茶葉を「荒茶(茶の原料)」に仕上げる製茶工場は規模の大きな共同工場だけでも約30軒。先祖代々受け継いだ茶園を守り、自然と対話しながら、伝統の茶草場農法と最新技術を活かしたお茶づくりにはげむ茶農家によって支えられているのです。



さらに、このエリアの茶農家は、平均年齢が比較的若いのが特長で、若手からベテランまでが生涯現役として活躍しています。農家同士の仲もよく、全員がよりよいお茶づくりを目指して一丸となって茶生産に取り組んでいます。このチームワークのよさも、お茶のおいしさの要因のひとつになっているに違いありません。


▼静岡新聞より2020茶産出額データ
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1004807.html




新しい投稿