#01 東山の重鎮に聞いた! 地元のスピリット「茶文字」

#01 東山の重鎮に聞いた! 地元のスピリット「茶文字」

新幹線や東名高速を走る車窓や空港の上空から、ちょうど掛川あたりで、山肌にくっきり浮かび上がる「茶」の文字をご覧になったことはあるでしょうか。この茶文字、草かんむりの横棒部分がなんと130メートル。「茶」の文字が見える向きや大きさで自分の位置がわかるという地元の人もいるそうです。

この「茶文字」の歴史はなんと昭和7年までさかのぼります。当時、茶業組合や村民が力を合わせ、粟ヶ岳の急斜面にマツの樹を植え付けたのがはじまりなのだとか。その後、初代の松の木が松くい虫の害に遭い、ヒノキに植え替えられたそうですが、今でも定期的にメンテナンスを行い、美しく雄大な茶文字が保たれています。

今回は、先祖代々東山茶に関わってきた地元の重鎮、杉山敏志さん(株式会社茶文字の里 東山/取締役)に、この東山のランドマーク「茶文字」について、お話しをうかがいました。

 

杉山敏志さん談

私のおじいさんの代の頃、当時の村長さんが掛け声を掛けたのが始まりだったと聞いています。白い紙を付けた縄を持って並び、それを向いの山から遠望して、手旗信号で合図して調整を繰り返してバランスを見ながら植樹していったそうです。携帯もトランシーバーもない時代でしたから、たいへんな作業だったでしょうね。

昭和60年頃に松くい虫の被害に合い、ヒノキに植え替えたときは、私も地区の者たちと2日がかりで作業したのを覚えていますよ。草刈りなどのメンテナンスは、部落で持ち場を振り分けて行っています。

遠くからだとなだらかに見えるこの茶文字のある斜面は37度。五輪競技のスキージャンプのジャンプ台の滑走角度が35度ですから、ほぼ同じくらいで、実は絶壁に近いんですよ。ですから草取りもなかなか容易ではありません。でも草が生えていると遠くから「茶」の文字がはっきりと浮かび上がらないから、私たちもがんばって作業しています。

この「茶文字」は東山茶に関わる者たちの心意気であり、いわば“スピリット”。東山の茶草場農法と同じように、人の手で地道に守っていかなければならない大切なものだと思っています。

観光地の東山

杉山さんのいらっしゃる「東山いっぷく処」から、この「茶文字」のある粟ヶ岳山頂まではおよそ1時間くらいで登ることができる気軽なハイキングコースです。粟ヶ岳は標高532メートルあり、天気のいい日には山頂から伊豆半島、遠州灘、富士山が眺望できます。

春は桜、新茶の季節は鮮やかな緑のお茶畑越しに、また冬には真っ白に雪化粧をして…と、季節ごとに美しく個性的な景観を見せてくれるこの「茶文字」を眺めながら、ハイキングもおススメです。また、電車の車窓などから「茶文字」を見つけたら、茶草場農業に関わる者たちのスピリットに思いを馳せて、じっくり眺めてみてくださいね。

「東山いっぷく処」は、掛川市東山の粟ヶ岳山麓にある地域密着のお店で、杉山さんは設立メンバーの一人。地元で製造されたこだわりの東山茶情報発信基地でもあります。

▼掛川市観光サイト「粟ヶ岳」
https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/kanko/spot-list/awagatake.html

▼かっぽしテラス(粟ヶ岳世界農業遺産茶草場テラス)
https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/kanko/spot-list/12456.html


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